モルモットって?

 
モルモット
 
ネズミ目テンジクネズミ亜目テンジクネズミ科テンジクネズミ属
和名:テンジクネズミ
学名:Cavia porcells
 
南アメリカの山岳地が原産のネズミの仲間で、同じテンジクネズミ科にはネズミ目の最大種であるカピバラがいます。本種は草原や山地で暮らしていた原種を食用に家畜化し、品種改良を重ねたものです。
 モルモットは四肢が短く尾がないずんぐりむっくりした身体的特徴をしています。体重は平均で800ℊ~1,000g。短毛、長毛、巻毛に縮れ毛、無毛等々様々な品種があります。
 
  妊娠期間は約2ヶ月とネズミの仲間のでは長く、生後から毛は生えそろい眼も開いています。鳴くことも走ることもできます。授乳期間は3週間程度ですが、生後2日で固形の食べ物も採食できます。
 
 声でコミュニケーションをとるため、耳が良く鳴き方も様々です。有名な「PUI PUI(プイプイ)」、甲高い「ピーピー」、低く喉を鳴らす「グルルル」、小鳥のさえずりの様な「ピヨピヨ」、カセットテープを巻き戻す時の様な「キュルキュル」など感情によって鳴き方が違います。また、鳴き声だけではなく威嚇する時はカチカチ歯を鳴らすこともあります。
 

モルモット写真

原種に近いような灰色系の個体

 
モルモット写真

長毛や多色など見た目も様々


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モルモットと人類

 

【食肉からペットへ】

 モルモットと人間の歴史はとても古く、一説によると紀元前3000年頃から始まっていると考えられています。南米のインディオにより山岳地などに生息していた原種を主に食用のために家畜化されていたそうです。
 
 現在でもペルーなどのアンデス地方には「クイ」と呼ばれるモルモットを使った伝統料理があります。他にも儀式や祭事の際にお供え物として本種を利用していたといわれており、人々の生活に密接に関わって生物でした。

 1530年頃に植民地化のためにヨーロッパ人が南米に上陸した時にインカ帝国で食肉用として飼われているモルモットを発見。その後1600年頃にヨーロッパへ持ち帰りました。当時の船乗りが食べる食肉は保存の利く乾燥肉ばかりで、ビタミン豊富な新鮮な肉の調達が難しい状況でした。モルモットは省スペースで野菜くずでも飼育できる船の中でも飼いやすい家畜で、新鮮な食肉として適していたのかもしれません。
 
 モルモットがヨーロッパに持ち込まれるとすぐにペットして愛されるようになり、16世紀になると盛んに品種改良が行われ様々な毛色のモルモットがうまれました。
当時のベルギー北部の絵画を見ても原種とは違う、多色種のモルモットが描かれおり家畜種が普及していたのが伺えます。
 
現在でもオーストラリアなどの海外ではモルモットのコンテストが開催され、毛並みなどの美しさの品評が行われています。

モルモット渡来イラスト

一説によると、はじめにヨーロッパに上陸したのはわずか2頭だった

【日本への渡来】

 日本にはモルモットが渡来したのは鎖国していた1843年、オランダ人によって長崎に持ち込まれたといわれています。本種の流通名の「モルモット」は、持ち込まれた際に本種をヨーロッパに棲息するマーモットmarmotと誤認して呼んでいたことが由来だと考えられています。
また、和名にある「テンジク」はインドの古い呼び名ですが、当時の日本では「テンジク=はるか彼方の遠い国」くらいのニュアンスで言葉が使われていたことから付けられたようです。
 
明治時代からペットとして飼育され始めましたが、同時にこの頃から医学的研究の実験にも使われていました。これはモルモットが人間と同じように体内でビタミンCを合成できず、薬物に対する感受性が高かったことが理由です。そして「モルモット=実験動物」というイメージが定着しました。
 
 現在では動物自体を実験で使うことがかなり減り、全国の動物園でふれあい動物として活躍しています。
 

モルモット親子写真

今ではホームセンターのペットコーナーでも見かけることも増えた


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アニマルウェルフェアってなに

動物を本来の習性にあった快適な環境で飼育しようという取り組みがアニマルウェルフェア。園ではどんな工夫をしているのでしょうか?

【良好な栄養】

主食(牧草)の他にも野草や野菜などをバランスの良い量で与えています。また複数の飼育の場合は十分な本数の給水ボトルを設置しています。

【快適な環境】

 床材には通気性の良いウッドチップを使用し、毎日の交換や休園日の全体掃除を行っています。

【良好な精神状態】

 個体の様子に合わせたペースでふれあいへの馴致を行い、負担を考慮した移動や保定をしています。

【良好な健康状態】
 日々の健康確認とともに、体重測定や爪切りを2週間に1度行い、異常の早期発見につなげます。

【行動 探索 交流 遊びのための工夫】
 隠れ家を置いて距離を保てるようにし、雌雄による暮らしの違いに合わた部屋分けをしています。


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帝京科学大学との共同研究

モルモットのストレスチェック

 

【ストレスの調べ方を調べる】

 ストレスの調べ方として綿棒を口の中に入れ、唾液中の成分「コルチゾル」の変化を調べるのが一般的ですが、簡単に調査するために耳穴体温で測れるか実験をしました。
 

なぜ耳穴体温?
 生体にストレスがかかるとホルモンバランスが崩れ、体温に変化があります。耳穴体温であればふれあい中も測定できます。しかし、今回の研究では確実な相関関係は認められませんでした。

モルモット写真

【ふれあいの影響は】

 生物園の「推奨するふれあい方」とそうでない「過度なふれあい方」で「コルチゾル」や行動などにストレスを示すような変化がでるか調べました。
 

結果は?
 個体差がありましたが「過度なふれあい」では、頭のふりあげや動き回るなどのネガティブな動作が多く発現する結果となりました。またその他の測定値では、コルチゾルの増加と体温の上昇が同時に見らました。

モルモットイラスト

推奨するふれあい

モルモットイラスト

過度なふれあい

モルモットイラスト

頭のふりあげ行動

モルモットの耳の温度、行動、ストレスホルモンの関係【動画(英語)】

上記の帝京科学大学の並木先生と共同で行った研究結果を動画としてまとめたものです。
【共同研究者】
帝京科学大アニマルサイエンス学科:並木美砂子、深山俊治
足立区生物園:鈴木高嶺、政岩あゆみ
 

【外部リンク】Encyclopedia 学術コミュニティ百科辞典

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