近年、全国の動物園では動物がより豊かに暮らせるよう「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の向上が進んでいます。一方で生物への負担を減らすため今まで行っていた「ふれあい」で直接生物に触れ合う機会も急速に失われています。しかし、私たちはモルモットの「ふれあい」と「生物に負担をかけない」ことは、必ずしも矛盾しないと考え、「モルモットにもやさしい」ふれあいコーナーを運営しています。
ここでは生物園のモルモットのふれあいに込めた想いについてご紹介します。
動物園と生物園にとってのふれあい
上野動物園に子供動物園が開園したのは1948年、戦後まもなくのことでした。当時はまだ社会が混乱し、娯楽も十分ではありませんでした。子供動物園の発案者である上野動物園園長(当時)の古賀忠道氏は雑誌に、「ふれあいを通じて子どもたちの可愛がる心を伸ばすべき」と述べ、その実現には「動物をよく知り、かつ子どもたちを理解した優秀な指導者が必要である」とも書いています。
現在の生物園でも、参加者に「愛情を育み、優しく」なってもらうことを目的にしています。触る時にはスタッフが横に付き添い、力加減や触り方への配慮など、優しく想いやれるようなふれあい活動への支援を行っています。
「子供動物園」
子どもたちにおとなしい動物をあずけると、二つのまったく相反した行動があらわれる。それは、動物たちを、ほんとうにかわいがることと、これをいじめて喜ぶことである。(中略)しかし、私たちは、子どもたちの行動のうち、動物をいじめる傾向をできるだけおさえて、かわいがるという心をのばしてやるべきだと考える」「子ども動物園のじっさいの運営は、ひじょうにむずかしいと思っている。(中略)とくに動物をよく知り、かつ子どもたちを理解した、優秀な指導者が必要である。というよりも、適当な指導者があるかどうかは、この子ども動物園の成功するか否かのわかれ道であるといえよう。
「子供動物園」
子どもたちにおとなしい動物をあずけると、二つのまったく相反した行動があらわれる。それは、動物たちを、ほんとうにかわいがることと、これをいじめて喜ぶことである。(中略)しかし、私たちは、子どもたちの行動のうち、動物をいじめる傾向をできるだけおさえて、かわいがるという心をのばしてやるべきだと考える」「子ども動物園のじっさいの運営は、ひじょうにむずかしいと思っている。(中略)とくに動物をよく知り、かつ子どもたちを理解した、優秀な指導者が必要である。というよりも、適当な指導者があるかどうかは、この子ども動物園の成功するか否かのわかれ道であるといえよう。
失われる「ふれあい」の場
近年の動物園は「アニマルウェルフェア(動物福祉)の向上」をテーマとし、ストレスをできる限り少なく、健康で快適な生活を送れるよう全国の動物園が取り組んでいます。また2020年、世界動物園水族館協会(WAZA)は、「動物と来園・来館者のふれあいガイドライン」を公表し、ストレスのかかるふれあい活動を避けるため、「ふれあい活動」を取りやめる園館も増え、「ふれあい=動物へのストレス」という図式ができてしまっているように感じられます。
動物と来園・来館者のふれあいガイドライン
1. アニマルウェルフェアを損なうようなふれあい体験を動物にしないでください。
2. 直接的接触に関わる動物には、生ずる可能性のある不快感やストレス反応を軽減するために、来園・来館者とのふれあいに対して適切な訓練を行わなければなりません。
3. 動物に対して不必要な要求をしないこと。必ず、来園・来館者が動物に不快感やストレス反応を誘発させないようにしてください。
4. 来園者・来館者とのふれあいに参加するかどうかの選択肢を動物に与えること。十分な休憩時間を与え、ふれあいに参加したくないという兆候を示した動物は、必ず、ただちに体験活動から外してください。
5. 通り抜けやタッチプール、ふれあい動物園など、来園・来館者が動物に極めて接近する展示では、その種のニーズを満たす適切な広さと適切な避難場所を確保してください。
6. 動物とのふれあい体験中に給餌が行われる場合は、適切な食餌および健康の総合的管理から外れないように、給餌の規制管理をしなければなりません。体験中に与える餌がその動物の唯一の餌や、餌の全てであってはならず、その餌を食べるかどうかは動物が選択できるようにしなければなりません。
動物と来園・来館者のふれあいガイドライン
1. アニマルウェルフェアを損なうようなふれあい体験を動物にしないでください。
2. 直接的接触に関わる動物には、生ずる可能性のある不快感やストレス反応を軽減するために、来園・来館者とのふれあいに対して適切な訓練を行わなければなりません。
3. 動物に対して不必要な要求をしないこと。必ず、来園・来館者が動物に不快感やストレス反応を誘発させないようにしてください。
4. 来園者・来館者とのふれあいに参加するかどうかの選択肢を動物に与えること。十分な休憩時間を与え、ふれあいに参加したくないという兆候を示した動物は、必ず、ただちに体験活動から外してください。
5. 通り抜けやタッチプール、ふれあい動物園など、来園・来館者が動物に極めて接近する展示では、その種のニーズを満たす適切な広さと適切な避難場所を確保してください。
6. 動物とのふれあい体験中に給餌が行われる場合は、適切な食餌および健康の総合的管理から外れないように、給餌の規制管理をしなければなりません。体験中に与える餌がその動物の唯一の餌や、餌の全てであってはならず、その餌を食べるかどうかは動物が選択できるようにしなければなりません。
子どもにも理解しやすいようにイラストを用いて説明
ふれあいはストレスになるのか
2022年に帝京科学大学と生物園でモルモットのふれあいに関する共同研究を実施しています。その研究の中で、「過度なふれあい」と「適切なふれあい」でモルモットにネガティブ行動やストレス値の変化について調査をしています。
その結果、「過度なふれあい」ではネガティブ行動が多く見られました。その反面、適切なふれあいでもフリーズ(緊張)は観察されましたが、ストレス値の上昇は見られませんでした。
またふれあいによるストレスの感じ方にも個体差があり、ふれあいによって値が上がることもあれば、数値が下がる個体もいました。
これらの結果が示すものは、個体の特性を見極め、正しいふれあいをすればストレスも下がる場合があるということでした。つまりモルモットのふれあいには「個体ごとの特性の見極め」と「お客様による正しいふれあい」が重要なのです。
耳穴体温の変化でストレス値の計測が可能か調査
生物園のふれあい
当園でのモルモットのふれあいで大事にしているポイントが2つあります。1つはモルモットの「馴致(じゅんち)」です。人になれていないモルモットをそのままふれあいに出すと、ストレスを感じたり逃げたりしていしまうので、生物園ではかならずデビュー前にトレーニング期間を設けます。生後3ヶ月頃から飼育員の膝の上で徐々にふれあいに馴れさせ、人に撫でられてもリラックスできるようにします。ただし、人間にも個性があるように、モルモットも個体によって性格や特性が異なります。
50頭以上いるそれぞれの個性をスタッフが把握し、ふれあいの際に活かしています。
2つ目は飼育員が横で見守ることです。お客様がふれあっている間も刻一刻とモルモットの気持ちや行動が変わっています。そんなモルモットの行動の意味や理由についてお伝えし、人とモルモットにとって心地よい時間になるようにアシストしています。このような取り組みの積み重ねが、モルモットにとって「ふれあい=安全で心地良い」の図式を作り、モルモットもリラックスできるふれあい活動へ繋がります。
馴致中のモルモット。まだ緊張した面持ち?
モルモットの正しい触り方
ふれあいコーナーの担当としての想い
生物園は大きい施設ではないですが、お客様との距離が近い地元に密着した動物園です。
まだよちよち歩きの時から親子で来ていたお子さんが、小学生になって友達と毎週のように来るようになり、中高生になると頻度が減りますがひょっこり現れて近況を報告してくれます。時には「生物系に進みたい」と進路相談をいただくこともありました。
ふれあいコーナーは小さい展示場所ですが、「モルモットとの出会い」が一つ一つ重なっていけば、今よりもヒトと生きものの社会をより良くすることができると信じています。生物園はこれからも生きものたちと共に歩んでいきます。
帝京科学大学との共同研究
